映画の魅力の1つは、異国の街並みや文化を楽しめることだと思っています。
いつか行ってみたいあこがれの街、行ったことのある懐かしい街、今まで知らなかった見知らぬ街を舞台にした作品。
映画を見ながら世界を旅した気持ちになれる、心を異国へと飛ばせてくれる気がします。
観光都市として世界的に人気のある美しい街「ウィーン」を舞台にした作品をピックアップしてみました。
ラブストーリー、アクション、伝記映画等、さまざまなジャンルの作品でウィーンが舞台になっています。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』
監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク/ジュリー・デルピー
製作:1995年/アメリカ
列車の中で出会ったアメリカ人青年ジェシーとフランス人女性セリーヌ。意気投合した彼らはウィーンで途中下車し、14時間だけという約束で一緒に過ごすことにするが……映画.com
2人の男女が会話をしながらウィーンの街を散歩をする。たったそれだけの作品です。事件が起きることもなければ、解明すべき謎があるわけでもありません。
2人が一緒に過ごせるのは夜が明けるまで…。
限られた時間のなかで、共に過ごす一瞬を大切にしようとする若い2人の姿は微笑ましさを感じさせます。
ウィーンの美しい街並みを背景に交わされる会話は、ごくごくたわいもないものから、深みのある哲学的な話題まで。2人の頭の良さがよくわかるお洒落なもの。
2人はともに時間を過ごすうちにお互いに異性として相手を意識し始め、挑発めいたやりとりも交わされます。こんなセンスのいい切り返しができたら素敵だな、と憧れを感じずにはいられません。
▽続編として2作品が製作されています。ウィーンで忘れえぬ一夜を過ごした2人は、その後どんな人生を歩んだのでしょう?
『第三の男』
監督:キャロル・リード
出演:ジョセフ・コットン/オーソン・ウェルズ/アリダ・バリ
製作:1949年/イギリス
第2次大戦終戦直後、米英仏ソの四カ国による分割統治下にあったウィーンに親友ハリー・ライムを訪ねてきたアメリカ人作家のホリー。だが、ハリーの家に着くと守衛からハリーは交通事故で死亡したと告げられる。腑に落ちないホリーはウィーン中の関係者をあたり、真相究明に奔走するが……。映画.com
モノクロ映像の美しさを存分に楽しませてくれる名作サスペンス。絶妙なカメラワークと白と黒のコントラストは芸術的な美しさです。
時代を越えて古さを感じさせない謎に満ちたストーリーは緊迫感たっぷりで、明かされる真相にはあっと驚かされる。特に下水道での追跡シーンは映画史上に残る名シーンと言われています。
『アマデウス』
監督:ミロス・フォロマン
出演:F・マーレイ・エイブラハム/トム・ハルス
製作:2002年/アメリカ
あらすじ:19世紀の楽聖ウォルフガング・モーツァルトの半生を宮廷音楽家サリエリの視点から描く。
天才になれなかった男サリエリが何よりも欲しかった才能を当たり前のように持つ男が目の前にいる。その男は神への信仰心に欠け、下品な男モーツァルト。
才能を与えられたのがどうして自分ではないのか?
サリエリは全身を焼かれるように嫉妬に苛まれ、絶望します。その姿を見ているとこちらの心も切りつけられるようでした。
サリエリを演じたF・マーリー・エイブラハムはアカデミー賞を獲得しました。
『愛の嵐』
監督:リリアナ・カバーニ
出演:ダーク・ボガート/シャロット・ランプリング
製作:1973年/イタリア
あらすじ:1957年のウィーン。ホテルのポーターとしてひと目をはばかるように働いているマックスは元ナチスの親衛隊員であった。ある日、かつて収容所で弄んだユダヤ人少女ルチアが客としてホテルにやってきた…。
現在も女優として第一線で活躍を続けているシャーロット・ランプリングの若き日の美しさは思わず見とれずにはいられません。
特にこの映画でもっとも有名なシーンの1つである、上半身裸でサスペンダーのみを見に付けた姿でのダンスシーンは官能的でドキドキしてしまうほど魅力的。マックスが虜になるのも仕方ないかな、という気がします^^;
通常の感覚では理解しがたい愛の形が描かれます。
『クリムト』
監督:ラウル・ルイス
出演:ジョン・マルコヴィッチ/ベロニカ・フェレ
製作:2006年/イギリス・オーストリア/フランス
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したオーストリアの天才画家グスタフ・クリムトの破天荒な人生を映像化した伝記ドラマ。何に対しても自由奔放なスタイルで通したクリムトが死の床で見る夢と記憶を通して、彼の生きた時代、世界、そして彼自身の愛を描く。映画.com
オーストリア出身の画家、クリムトを主人公にした作品です。
ただ、普通の伝記映画だと思って観るとちょっと驚くかもしれません。物語の冒頭ですでにクリムトは死の床におり、幻想か妄想かわからないような世界に迷い込んでしまいます。
かなり独特な作品なので好みは分かれる作品です。天才芸術家は生きている世界、見えている世界が凡人とは違うのかもしれませんね。
『男はつらいよ 寅次郎 心の旅路』
監督:山田洋次
出演:渥美清/倍賞千恵子/淡路恵子
製作:1989年/日本
あらすじ:寅次郎がウィーンに行きます。
私も本作品を知った時はびっくりしたのですが、なんと寅さんはウィーンに行ったことがあるんです。ウィーンと湯布院を聞き間違えて(苦笑)
寅さんは海外に行ってもマイペース。惚れっぽくて、美人に恋をして失恋をしてしまいます。マドンナ役の江上久美子を演じるのは竹下景子。当時は「お嫁さんにしたい女優NO.1」と言われる人気女優でした。
キャッチコピーは
美しき青きドナウのさざめきに、寅は今夜も眠れない。
『ミッションインポッシブル5 ローグ・ネイション』
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ/レベッカ・ファーガソン/サイモン・ペグ/ジェレミー・レナー
製作:2015年/アメリカ
トム・クルーズの代表作品の1つ。敏腕スパイのイーサン・ハントの活躍を描く『ミッション・インポッシブル』シリーズ第5弾。
スパイ映画は世界各地の都市を駆け巡ることが多いですが、本作ではウィーンが舞台の1つとなっています。
トムは冒頭から1500メートル上空を飛行する飛行機にしがみ付くアクションをスタントなしで披露してくれています。トムのプロ意識は心から尊敬の念を抱かずにはいられません。
シリーズが続くと惰性になってしまい、面白さを失ってしまうシリーズ作品が多い中、本作がシリーズ最高傑作と呼ばれるほどスリルたっぷりのストーリーと派手なアクションで最後まで楽しませてくれます。バイクスタントも迫力満点。
新ヒロイン、レベッカ・ファーガソンのクール・ビューティぶりもみどころ。
『たそがれの維納(ウィーン)』
監督:ヴィリ・フォルスト
出演:アドルフ・ヴォールブリュック/ オルガ・チェホーワ
製作:1934/オーストリア
一九〇五年のウィーンの春、カーニヴァルの時の出来事である。外には雪が降っていたけれど舞踏会は賑やかだった。その夜の福引でチンチラのマフを当てたのは宮廷音楽指揮者パウル・ハラントの許婚アニタである。映画.com
ウィーンを漢字で書くとこうなるのか!とこの映画で知りました。見たことはないのですが、映画評論家の淀川長治さんが高く評価している作品です。
20世紀初頭のウィーン。美男の誉れ高い流行画家ハイデネックと、彼を取り巻く3人の女の恋のさや当て。その危機的状況をまるく収めたのは聡明な田舎娘の計らいだった……。渋く苦い大人のロマンティシズムを香り高く描いた、ハイソサエティ・ドラマの古典的名作。ぴあ生活
『サウンド・オブ・ミュージック』
監督:ロバート・ワイズ
出演:ジュリー・アンドリュース/クリストファー・プラマー/エリノア・バーカー
製作:1965年/アメリカ
1938年、オーストリア・ザルツブルグ。古風で厳格な教育方針のトラップ家に家庭教師としてやってきた修道女マリアは、子どもたちに音楽や歌うことの素晴らしさを伝えていこうとするが、子どもたちの父親であるトラップ大佐とは事あるごとに衝突してしまう。やがて、自分がトラップ大佐にひかれていることに気付いたマリアだったが、そんな折、トラップ大佐は再婚が決まってしまう。映画.com
第38回アカデミー賞作品賞他5部門を受賞(ノミネートは10部門)
『ドレミの歌』『エーデルワイス』など現代でも馴染みの深い数多くの名曲に彩られたミュージカル映画の傑作。
美しいアルプスの自然、生き生きとしたキャラクターたちの表情、心に染みわたっていく歌声、そしてひたひたと忍び寄る戦争の恐ろしさ…。クライマックスのスリリングなストーリー展開…。映画の魅力を存分に詰め込んだよう作品です。
トラップ大佐を演じたクリストファー・プラマーは2021年に91歳で亡くなりました。『人生はビギナーズ』でアカデミー助演男優賞を受賞、『ゲティ家の身代金』や『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』など、多数の作品に出演していました。
『黄金のアデーレ 名画の帰還』
監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン/ライアン・レイノルズ
製作:2015年/アメリカ・イギリス
メリカに住む82歳のマリア・アルトマンがオーストリア政府を相手に裁判を起こした。世界中を驚かせたその裁判は、クリムトが描いたマリアの叔母アデーレの肖像画「黄金のアデーレ」の返還要求だった。ナチス統治下のオーストリアで、ナチスによって奪われたその名画には、マリア自身と彼女を取り巻く人々のさまざまな記憶が詰まっていた。映画.com
1人の老女が政府を相手に訴訟を起こす…。1枚の絵のために…。
とてもドラマチックなストーリーですが、なんと実話を元にしています。
ヘレン・ミレンの演じたマリアのチャーミングなおばあちゃんぶりも必見。たった1枚の絵だけれども、そこには『絵』以上に様々な想いがあったのです。戦争の悲惨さ、過ちを認めることの難しさ、様々なことを考えせられる作品です。
以上、『ウィーンを舞台にした映画』でした。