長野県上田市にある別所温泉「臨泉楼柏屋別荘」を紹介します!
私が訪れたのは2015年12月。大河ドラマ「真田丸」の放送を翌年に控え、真田丸にゆかりのある地を巡ろうと夫婦で上田市に旅行した時、宿泊先に選んだのが「臨泉楼柏屋別荘」でした。
別所温泉にはたくさんの宿がありましたのでどこに泊まるか悩みましたが、歴史が古く多くの文化人に愛され、川端康成が作品を執筆した宿であることが決め手になりました。
残念ながら「臨泉楼柏屋別荘」は2017年4月に破産、廃業。その後、運営元が変わり2018年頃に営業が再開されるという報道が流れた時期もありましたが、なかなか話が進まず・・・。歴史ある建物がどうなってしまうのか、、気になっていました。
改めて調べてみたところ、現在は宿ではなく、地域イベントやサークル活動、ワークショップなどに利用できる地域交流の場へと変わって運営されていました。建物は当時のまま残っているようで、安心しました。
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文豪が愛し、大名も宿泊した「臨泉楼柏屋別荘」
最寄りは別所温泉駅。レトロな雰囲気のかわいらしい駅舎でした。
別所温泉の温泉街を歩いていき、その奥まったところに木造4階建ての「臨泉楼柏屋別荘」がありました。
臨泉楼柏屋別荘は上田市景観賞を受賞している歴史のある建物です。かつては上田藩の代官出張所としての役割を持っていたそうで、江戸時代から建っているとのこと。
古い建物ならではの優しい木の香りが漂ってくるような佇まい。
4000坪の敷地に客室は20室。つつじ庭園を取り囲むように客室が配置されており見頃の時期はさぞかし壮観でしょう。
実は臨泉楼柏屋別荘はジブリアニメの名作『千と千尋の神隠し』の舞台「油屋」のモデルと噂される宿の1つ。日が暮れ、灯りのついた宿が暗闇の中に浮かび上がる姿を見ると、雰囲気がそっくりでモデルと言われるのも納得でした。
油屋のモデルとしては群馬県・四万温泉の積善館が有名ですね。カオナシがそっと佇んでいそうな、赤い橋が印象的な宿です。
さて、宿の中をご紹介していきます。
こちらのロビーでチェックイン手続きを。奥には宿名が刻まれた古い木の看板がありました。
▽お茶と栗羊羹、お漬物をいただきます。
▽こちらが休憩処。風呂上りに冷たい飲み物を楽しむ人の姿が見られました。
ロビーのそばにな売店があり、お土産を買うことができます。
臨泉楼柏屋別荘には著名人も多く宿泊しており、売店の壁の一角にはサイン色紙がずらりと並んでいました。作家、漫画家、スポーツ選手、俳優…。各界著名人の方々の色紙は圧巻で、風呂上りにじっくり眺めさせていただきました。
著名人のサインがずらり
▽館内は廊下もほとんど畳敷き。足の裏に畳の温かみを感じながら部屋に向かいます。ここからが長い。廊下と階段が続きます。
まだまだつづきます。
建物は入り組んでおり、エレベーターはありません。階段も急で狭さを感じる場所もありました。お年寄りや足の不自由な方は注意が必要です。でも古い建物がお好きな方は絶対に気に入ると思いますよ〜。
川端康成が愛した「きよすみ」
宿泊したのは「きよすみ」というお部屋。
「きよすみ」はかつて代官出張所として使われていた頃の面影が一番濃く残る部屋で、かつては大名が宿泊した部屋なんです。それを知った瞬間に私のテンションも急上昇しましたヾ(=^▽^=)ノ
ようやく部屋についた~!!
と、ドアを開けて部屋の中に入ってみたら、さらに廊下が続いていました(笑)
「きよすみ」はワンフロア貸し切り!左手のふすまを開けると客室があり、この廊下の先に専用露天風呂があります。
廊下の先はまだまだ続きます。つきあたりに扉があって。
扉を開けると脱衣所とトイレがあります。
そして専用露天風呂があります。
ここまでたどり着くのが遠くて寒いのですが、離れなのでとっても静か。湯が注がれる音だけが聞こえていて、物音や人の声も聞こえません。
空を見上げて、風を感じながら、心行くまでお風呂を堪能しました。写真撮るのを忘れていたのですが、露天風呂のそばに内風呂もあります。
▽部屋はこんな感じ。こたつがあります。(荷物広げて映り込んでいて見苦しいですが)
4月〜5月のつつじの見頃の時期は窓から外を見ると、一面のつつじが広がっているそうです。
『雪国』『伊豆の踊子』の作者でノーベル文学賞を受賞した小説家の川端康成は、この部屋で外の景色を眺めながら『花のワルツ』を執筆したそうです。
あえて改装はせずに当時の風情を大事にしているのだそうです。設備は古さがあり、窓の造りも昔風なので冷えます。けれど、古い建物が醸し出す雰囲気が素晴らしいんですよ。優しい木の香りと畳の香りが宿の中に満ちていて、江戸時代から続いてきた人の営みを感じられるようでした。
大正ロマンあふれる貸切風呂
臨泉楼柏屋別荘には大浴場と露天風呂、貸切風呂があります。大浴場の浴室の床は畳敷き。冷たくないし、滑りにくく、使いやすいなと思いました。
大浴場の写真は撮れませんでしたので貸し切り風呂の写真を紹介します。湯気で曇って写真がイマイチになりましたが…。
レトロなタイルが可愛らしい丸いお風呂です。平安時代からこの地に湧き出て、多くの人々を癒してきました。
源泉かけ流しで泉質及び効能は以下の通りです。
泉 質:硫黄泉(無色透明)
効 能:神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷性、病後快復期、疲労回復、健康増進
飲 用:糖尿病、通風、便秘
臨泉楼柏屋別荘の夕食|季節の懐石料理
温泉を思いっきり楽しんだら次は夕食を楽しみます。
地元の食材をふんだんに使った季節の懐石料理を個室御食事処でいただきました。
ではお料理の紹介をします。
まずは食前酒と先付。
先付は紫芋豆腐と合鴨ロース。ほんのり紫色のお豆腐は芋の甘みがしっかりを感じられました。
▽御造りは2種類。
魚は信州サーモン、鯛、牡丹海老。信州サーモンは長野県水産試験場が10年の歳月をかけて開発した新種だそうです。とろとろした食感と濃厚な味わいでした。
それから人生初の馬刺し!
えー、馬…。と、おそるおそる箸を伸ばしましたが、大丈夫でした!おいしい!
ややクセがあって独特の風味がありましたが、なかなかイケます(*^-°)v
生姜や大葉などの薬味と一緒に食べるので食べやすかったです。なんとなく勝手に「固いのかな?」と想像していましたが、柔らかかったです。
▽煮物
野菜の炊き合わせ。あっさり味の野菜の煮物。薄目の味付けなので野菜の甘みが口いっぱいに広がります。かぶがトロトロです。
▽仲居さんが釜炊きご飯をセットしてくれました。お米の炊ける匂いと、ブクブクという音が部屋の中に広がっていきました。
▽焼八寸
柿玉子、ぶどう博多、白身魚錦糸巻、はじかみ、岩魚姿塩焼き。
柿の形をしているのはウズラの卵。柿の葉まで再現してあって芸が細かい!
はじかみは口直しの意味があるので、最後に食べるのがマナーだそうです。全部食べずに茎の固い部分は残します。知らずに最初に食べてしまいました…。でもいいんです、美味しく食べられれば(*`д´)b OK!
▽台のもの
信州牛の豆乳鍋。肉好きだからうれしい!
豆乳スープなので、味はまろやか。野菜もたっぷり食べてスープまでしっかり飲み干しました。
▽揚げ物
長芋と胡麻豆腐 玄米揚げ。
長芋の揚げ物は初めて食べましたが、さくさくなのにちょっとねっとりした舌触りがおいしくて好きでした。わさびを添えていただきます。
▽止め碗と釜炊き御飯
ちょうどよい時間にご飯も炊きあがりました。さすが!
釜で炊いたごはんって、どうしてこんなにおいしいのでしょうか(〃´o`)=3 フゥ
お米の甘さが口の中いっぱいに広がりました。
▽水菓子
柿とティラミスとパンナコッタです。少しづつ3品あるのが嬉しい。
さて、ここで料理長からの心づかいとしてスイーツがもう一品登場!!お品書きにないサプライズ。
フルーツとミニケーキの盛り合わせです。クリスマスが近かったからでしょうか。理由はわからなかったのですがお心遣いありがとうございました(* ̄∇ ̄*)エヘヘ
スイーツまで食べるとかなりおなかいっぱいになりました。仲居さんはベテランだったようで、料理を出すタイミングも抜群で料理の説明も丁寧にしてくださいました。
信州なので山の幸がメインになるかと想像していましたが、信州サーモンという珍しい土地の魚も食べられました。それに初体験の馬刺しは事前の想像よりもずっと食べやすくおいしかったです。
臨泉楼柏屋別荘の朝食
朝食は昨夜と同じく個室食事処でいただきます。いかにも日本の旅館の朝食という感じの純和風の献立でした。
レンコンのキンピラ、だし巻たまご、手作り豆腐、とろろ。少しずつ色んなおかずが並んでいています。あんのかかっただし巻きたまごがおいしかったです。豆腐は今朝の作りたて。3種の薬味でいただきます。
小さな鍋の中身は味噌汁。席に着いたら点火してくれるのでアツアツがいただけます。
▽私のお気に入りは特製ゆずきのこ。ゆずの香りと風味が食欲をそそります。(旅館のお土産屋で購入できます)
メインの鮎もしっかりした濃い甘辛風味でおいしかった!とても柔らかくて頭から骨まで全部食べることができます。
最後に宿から嬉しいおもてなしがありました!!
チェックアウト後、スタッフの方が宿の前で記念撮影をしてくれ、その場でカレンダーにしてくれました。
カレンダーには別所温泉の季節の行事も記載がされており、おかげさまで帰宅後もカレンダーを見るたびに臨泉楼柏屋別荘のことを思い出すことができました。温かい心づかい、本当に嬉しかったです。
※2024/3/22追記
いただいたカレンダーは1年間自宅に飾った後、今も大切に保管しています。忘れがたい旅の思い出です。
いつかリピートしたいと思いながら、臨泉楼柏屋別荘は2017年に廃業。もう泊まることはできなくなりました。建物はこの先も末永く残っていってほしいと願わずにいられません。
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